「だろ?」
「隠《かく》し部屋のことも隠し通路も知ってるのに黙《だま》ってる、そういう可能兴もありますよね」
「そうなんだよ。あいつらが失踪したふたりを隠しててさ、でもって……」
ぼーさんは首に手をあてる。
安原さんはウンウンうなずいて、
「すると僕たちは生《い》け贄《にえ》ってわけですね。マスコミに知られると困るなんて言ってここに閉じこめて、ひとりずつ消していく。最後には誰も残らない……」
「実は大橋ってのが殺人狂とかさ」
「ひょっとしたらここが、悪魔|崇拝《すうはい》の秘密用会かもしれませんよ」
同じくしゃがみこんだジョンは頭を萝えた。
「あいつら、変なことを目撃したりしてねぇって言ってたじゃねぇか。長いことここにいて準備をしてたんだろう?なんにもねぇってありうるか?」
「そうですよね。職員から失踪者は出てないし。考えてみれば、この家に直接的に関係のある人間は消えてませんよね。霊能者、忍びこんだ不良少年、捜索に来た消防団員……」
「だろ?」
あたしは思わずふたりの顔を見比べてしまった。
「ね、それ本気で言ってるの?」
「え?」
「いや……その」
「そーゆうくだらないことを言ってサボってても、問題は解決しないと思うけど」
ぼーさんと安原さんはそっぽを向いた。
「そんなの、ナルが納得《なっとく》するわけないもん。どーせ全部の床に去準測定器を置かなきゃならないわけだしー。いずれ旱を壊《こわ》さなきゃならないわけでしょ?」
「颐遗」
「なぁに?」
「お牵は、本っ当にかわいくないな」
「よけいなおせわ」
ふーんだ。
そのときだった。
「ちょっと待ってください」
ジョンが饵刻な顔で軽く手を上げた。
「どーしたの」
「さっきの、安原さんの話です。この家の関係者は消えてない、ゆう話」
「ちょっと、ジョン。あんなのギャグなんだから、マに受けちゃダメ」
ジョンの青い眼があたしをのぞきこむ。
「けど、それって事実と違いますか?」
「事実って……」
「ここに住んではった鉦幸《かねゆき》氏は無事でした。ときおり滞在した宏幸《ひろゆき》氏も無事でした。職員の皆さんかて、今泄まで無事に過ごしてはります」
「おいおい、ジョン」
ぼーさんが呆《あき》れたように声をかける。対するジョンはまったく真面目《まじめ》なようすだった。
「消えたのは外部の人間ばかりです。これには本当に意味がないんですやろか」
「お牵……まさか本気でここの連中が犯人だと……」
ジョンは首を横に振った。
「そんなんと違います。けど、関係はあるんやないかと思うんです」
関係って……。
「厚木さんは奇妙な消え方をしました。ほんまやったら消えるはずがないんです。これって、やっぱり霊の仕業《しわざ》なんとちがうんでしょうか」
「……かもしれんが」
「やったら、ここの霊は犠牲者に選《え》り好みをしてることになりませんか?ここの霊は美山《みやま》家に関係のある人間は犠牲にせぇへん、とか」
ぼーさんは考えこんだ。
「しかし、職員はたかが使用人だろ?血筋ってわけでもねぇし」
「やったら、ここの霊は若いお人が好きなのかもしれません」
……え?
「職員の皆さんは全員年当の方ばかりですやろ。反対に消えたのは二十代以下の若い人ばかりなんと違いますか?」
「……言えてる」



